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4K・8K放送スタート、まず儲かるのは誰だ?

4K・8K放送スタート、まず儲かるのは誰だ?

12/2(日) 14:52配信

ニュースイッチ

メーカーの期待は大きいが…

 超高精細の映像4K・8Kの実用放送が衛星放送で12月1日から始まった。人の視覚に近いこれまでにない臨場体験を得られるとして、関連メーカーの期待は大きい。ただ、4Kの家庭普及率はまだ10%ほど。普及価格帯の製品開発と同時に、新たな映像体験にふさわしい魅力的なコンテンツの提供が必要だ。

一般的に画面を構成する画素の数が増えるほど自然の色彩に近い精細な映像となる。8Kは現在のフルハイビジョン(2K)の16倍もの画素数となり、自分の目で見たような臨場感を得られる。さらに、8Kでは前後左右から立体的な音声が流れる音響技術にも対応しており、その場にいるような没入感を高められるのも特徴だ。

シャープは先月17日に、4Kおよび8Kチューナー内蔵の液晶テレビを発売した。価格は70インチの8Kテレビで80万円ほど。「見てもらえば、違いが分かる」と、シャープの加藤直樹スマートTVシステム事業本部長は、市場拡大に自信を持つ。

これまで4Kテレビを購入しても、インターネット配信の4Kコンテンツなどを活用しないかぎり、利用者は従来通りのフルハイビジョン映像を視聴していた。4K放送で4Kの画質の高さが認められれば、さらに高精細の8K映像への関心も高まると期待する。

こうした追い風をとらえるため、8Kテレビを積んだトラックで全国各地を巡り、8K映像に体験できる活動を始めた。さらに加藤氏によると、「量販店も8Kテレビが市場を喚起すると期待している」。実際、全国の量販店約2000店で8Kテレビが展示される。シャープは量販店と一体で8K市場自体の創出を目指す構えだ。

一方、ヤマダ電機と独占契約を結ぶ船井電機はまだ市場規模が今は小さいとみて、4Kチューナー内蔵テレビは販売しなかった。ただ、価格下落が進めば、19年後半ごろに需要が本格化するとみる。その時には、「製品ラインアップを一気に増やす」と船越秀明社長は宣言する。

富士キメラ総研(東京都中央区)の調査では、4K・8Kテレビの国内累積台数(同世帯2台目以降は除く)は、17年の446万台から25年には5128万台と10倍以上になると見込む。

ただ、順調に普及するかは「4K放送より価格の下落」(船井電機の船越社長)にかかっているとの指摘は多い。20年の東京五輪・パラリンピックというビッグイベントの追い風が吹く中、多くの消費者の期待に応える“値ごろ”な価格帯が重要なようだ。

業務用機材の世界も4K・8Kに商機を見いだす。ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの河野弘副社長は「(業界は)節目にある」と語る。4Kイメージセンサー搭載のカメラや、4K番組用のレコーダーなどで、映像制作の効率化と高画質化をこれまで以上に追求する。

キヤノンも業務用カメラ「XF705」を開発。4Kの高精細映像をSDカードに高度に圧縮記録できる機能が売り。業務用カメラの旗艦モデルとして約8年ぶりのリニューアルだ。19年には業界最高峰のズーム機能を備えた放送用箱形レンズも投入する。イメージソリューション事業本部で副事業本部長を担う枝窪弘雄理事は、「4K・8K放送に合わせ、着実に手を打ってきた」と話す。

「フジノン」ブランドで放送レンズを展開する富士フイルムも、高精度で研磨した数十枚のレンズで構成する8K対応の放送用箱形レンズを開発中だ。

東京五輪・パラリンピックといったスポーツイベントも、大型中継車システムなどの需要を後押しする。ソニービジネスソリューションの宮島和雄社長は、「4Kの中継車への投資が旺盛になっている」と、需要の取り込みに意欲を示す。

携帯キャリアは熱視線

 4K・8Kには、携帯電話各社も熱い視線を送る。20年に商用化予定の第5世代通信(5G)を活用すれば、4K・8Kの映像コンテンツをスマートフォンで効率的に視聴できるからだ。5Gは従来より約100倍の超高速通信や大容量で低遅延の通信が特徴。4K・8K映像の伝送に欠かせない。このため各社はスポーツやエンターテインメント分野で5Gで伝送する実証実験に取り組む。

KDDIは、ゴルフの試合を4Kカメラで撮影し、5Gで大型モニターに中継する実証試験をした。11月上旬に千葉県で開催したゴルフトーナメントで実施。トーナメントの18番ホールに、韓国サムスン電子が5Gの実証環境を構築し、試合の様子を4Kカメラで撮影し、会場に設置した大型モニターへ伝送した。観客はゴルフ中継で利用されるスーパースロー映像を高画質な映像で視聴した。

実用化は20年を想定。「地上波で放映できない中継映像をスマホで視聴できるサービスなどを提供したい」(KDDI)考えだ。

NTTドコモもスポーツ分野での実証を進めており、マリンスポーツをカメラで撮影し、5Gで伝送することに成功した。海上に停泊した小型船に5Gの移動局を設置。船に設置したカメラや、飛行ロボット(ドローン)搭載のカメラで撮影した競技映像を、移動局から地上の5G基地局に伝送し、特設会場のスクリーンで生中継放送した。観客は離れた位置で競技する選手の動きを、迫力ある映像で視聴した。

ソフトバンクはリコーと共同で、屋外で撮影した4K映像を5Gでパソコンに伝送し、リアルタイム視聴できることを確認した。動画投稿サイト「ユーチューブ」などへの配信も実現。今後は屋外で撮影した4K映像を配信する次世代の人気「ユーチューバー」が生まれそうだ。

4K・8K映像をスマホで視聴できるようになると、一度に処理するトラフィック(通信量)も大量に増える。5Gはこういったトラフィック処理に不可欠。普及には各社が5G向けの技術開発を進めて、魅力あるコンテンツを生み出すことが求められる。

日刊工業新聞・平岡乾、栗下直也、杉浦武士、大城蕗子

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