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NHK「常時同時配信」で、肥大化・民業圧迫…民放各局が懸念

NHK「常時同時配信」で、肥大化・民業圧迫…民放各局が懸念

6/24(月) 12:10配信

読売新聞オンライン

読売新聞社

 NHKが放送と同時にインターネットにテレビ番組を流す「常時同時配信」を認める改正放送法が、先月国会で成立した。民放各局がNHKの「肥大化」や「民業圧迫」の懸念を示す中、今年度中の実施を目指すNHKの狙いを検証する。(文化部 井上晋治)

読売新聞社テレビ離れや人口減→収入減に危機感

 NHKが常時同時配信に乗り出す背景には、若年層のテレビ離れや将来を見通した上での人口減少に伴う受信料収入の減少に対する危機感がある。

 同局は現行の3か年計画(2018~20年度)の策定段階で、経営委員会に提出した資料で「テレビを見ずにネットのみ利用する人は国民の約5%」という世論調査結果を示した。上田良一・NHK会長は昨秋、受信料の値下げを公表した際、日本の世帯数が2023年をピークに減少するという国立社会保障・人口問題研究所の推計を踏まえ、「経営環境は厳しさを増す」との認識を示した。

 受信契約を結ばず、パソコンやスマートフォンなどだけで配信番組を視聴する世帯に将来、受信料を求める可能性について、上田会長の諮問機関「受信料制度等検討委員会」は17年7月、インフラ整備や国民的な合意形成の環境が整うことを前提に「一定の合理性がある」と答申。

 上田会長も今年1月の取材に対し、「情報が社会的基盤の役割を果たしているという信頼が国民から得られれば、受信料の負担についてご理解いただけると思う」と、前向きな考えを示している。「2・5%維持」明言避ける

 NHKは番組配信を含むインターネット業務の現行の実施基準で、運営費の上限を受信料収入の2・5%と規定している。今年度予算では2・4%にあたる約169億円を計上。上田会長は「常時同時配信を19年度中に実施できても、2・4%の範囲内でやる」と説明する。

 だが、20年度から常時同時配信が通年の実施となれば事情は異なる。同局は通年の運営費を50億円と見積もるが、これに配信する番組で使う音楽など著作権上の処理費が上積みされる。

 その額がいくらになるのかは権利者側との交渉次第で不明なため、2・5%の維持について、上田会長は「適正な上限を設けて抑制的な管理に努め、透明性を確保して民放や視聴者の理解を得る」と述べるにとどめ、明言を避けている。

民放ローカル局を圧迫か

 日本民間放送連盟(民放連)は昨年10月、常時同時配信の前提要件として2・5%の維持など8項目をNHKに要望。大久保好男・民放連会長は「2・5%を順守し、抑制的に運用するところから始めなければ、業務の肥大化という批判を受けかねない」とくぎを刺す。

 潤沢な受信料収入が経営を支えるNHKと異なり、広告収入で成り立つ民放は、常時同時配信について「事業性が見いだせない」との立場だ。NHKの番組がいつでもネットで視聴できる状態になれば、民放ローカル局は視聴者を奪われかねないと懸念を強める。

 このため、民放連はNHKへの8項目で地域放送局の番組を県域を越えて配信しない「地域制御」も要望した。

 これに対し、NHKは昨年11月30日の総務省の有識者会議「放送を巡る諸課題に関する検討会」(諸課題検)で「地域放送番組については地域制限を実施する」と回答したが、地域放送局での整備に時間がかかるため、当面は東京の放送番組を配信する方針だ。NHK常時同時配信の実施に対する民放連の8項目の要望

◆区分経理の採用によるネット活用業務の透明化

◆受信料収入2.5%上限の維持

◆地域制御(地域放送局の番組を県域内で配信)

◆民放事業者との連携

◆外部監査の強化、ガバナンス改革

◆業務委託の透明性、適正性向上、子会社の見直し

◆衛星波の整理・削減など既存業務の見直し

◆受信料体系・水準等の見直し司法判断、受信契約を後押し

 民放各局がNHKの肥大化を懸念する最大の理由は、その潤沢な資金力だ。NHKが発表した2019年度予算の総事業収入は、18年度比で79億円増の7247億円。このうち受信料収入は、同36億円増の7032億円を見込んでいる。

 受信料収入が好調なのは、17年12月に最高裁がNHKとの受信契約を強制する放送法64条1項を「合憲」とする初判断を示したことが大きい。その後、新規契約の申し出が増え、18年度の受信料収入(速報値)は7122億円と初の7000億円台に達した。

 テレビを視聴できるワンセグ機能付き携帯電話の所有者がNHKと受信契約を結ぶ義務があるかが争われた上告審でも、最高裁は3月、ワンセグ携帯の所有者に受信契約を義務づける初判断を示した。NHKは受信料徴収で司法の“お墨付き”を相次いで得ている。

 常時同時配信では受信契約が確認できない場合、配信中は契約を促すメッセージ付き画面を流す予定だ。砂川浩慶・立教大教授(メディア論)は「若年層にも視聴の機会を広げるとして常時同時配信に乗り出しながら、ネット受信料について世の中に問う姿勢がないまま、契約を確認できない場合は警告文を流すとしたら中途半端だ」と指摘した。

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